「国が認めた借金救済制度」問題について
先日、NHKでも「国が認めた借金救済制度」に関する問題が報道されました。
NHKではインターネット上の広告で「国が認めた借金救済制度」との文言で消費者を誘引するものの、実際には借金の減額ができなかったケースも存在していたと報道されています。
さて、そもそも「国が認めた借金救済制度」とはどのようなものでしょうか。「国が認めた借金救済制度」はないのでしょうか。
結論から申し上げますと「破産」と「再生」は「国が認めた借金救済制度」と言ってよいように思われます。
「破産」では場合にもよりますが、免責といって債務がなかったことになる制度がありますし、「再生」でも債務の減額が認められています。これらの方法は裁判所での手続きとなりますので、手続きとしては若干面倒になりますが、まさに国が用意した債務者救済制度ということになります。
では、借金の減額方法には「破産」と「再生」以外にはないのでしょうか。
そんなことはありません。「任意整理」と言って、交渉で借金を減額してもらうことも考えられます。(あるいは昔からの借金ではあれば、過払い請求ということもありますが、最近では減っています。)
これは純粋な交渉事項となります。貸している会社からしても、破産されてしまうよりは一部でも返済してもらった方がいいので、交渉に応じます。もっとも、一度減額交渉をしてしまうと、少なくともその会社でのそれ以上の借金は困難となってしまいます。ただ、交渉する場合には通常限度額まで借りていることが多いので、あまり気にしなくていいかもしれません。
この「任意整理」は「国が認めた借金救済制度」でしょうか。
私は少なくとも語弊があるように思います。確かに、減額の合意をすれば、その合意は有効ですから、仮に合意をした後に、カード会社などが合意以上の支払いを求めて、万が一、裁判所に訴えたとしても、債務は合意以上は支払わなくてもかまいません。こうした意味では「国が認めた借金救済制度」と言えなくもありません。
しかし、そのような意味においては逆に「国が認めない借金救済制度」というのはあまり考えられないことになり、「国が認めた借金救済制度」というのは特段広告するような内容でもないことになります。
広告で「破産」や「再生」ではなく、「国が認めた借金救済制度」と記載するのは、これはできれば「破産」することなく、借金を減額してもらいたいとの消費者心理をついているものと考えられます。
こうした広告を見た消費者が連絡した時、広告主が消費者の返済能力を見た上で、破産よりも任意整理の方が望ましいと判断した、あるいは破産はどうしても避けたいと任意整理を消費者が強く希望した結果、任意整理を選択したのであれば、問題とはならなかったでしょう。
しかし、NHKで大きく報道されたのは、やはり消費者との期待と広告内容に大きな差があったためと判断せざるをえないでしょう。業界としても、このような広告に対して今まで対策を打てなかったことは反省すべきではないかと考えます。
南 昌宏